もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
もしも、携帯がなかったら。
学校を休んだ日は、瑠伊が心配してるかもなんて思ったかもしれない。
今よりも、瑠伊に対して“友達”って強く思っていたのかもしれない。
とーちゃんが私のことを気にかけている、考えていると、いくら口で言っても私が、そう感じないのは携帯のせいかもしれない。
だって、気にかけているから、電話くらいしてくるだろうし、考えているなら私の様子を伺うメールだってできるはず。
そのどちらもしてくれないとーちゃんだから、私は“嘘つき”なんて心の中で思っているんじゃないだろうか。
“便利”な物に違いはないけど、人の思考までも機械のように冷たくしているのは、肌身離せずに持っている携帯のせい……
「あれ?純麗ちん?」
店のトレイを片手に、リュウが突然私の視界に入ってくる。
「もう着いてたの?まだ、約束の時間じゃないから……純麗ちゃんって絶対遅れてくるタイプだと思ってたのに。てか、やる気満々?」
リュウ君、何にやる気満々になるのか、私には全然わからない。
「取り敢えず、座ったら?」
「そうだよね。これ飲んでからにしたいし!見て、コレ!季節限定商品!旨そうじゃない?俺って季節限定に弱いんだよね。店の金儲けのためだってわかってても、絶対買っちゃうっていうか」
「そう」
リュウと同じ思考だったなんて、自分が情けなくなる。
しかも、リュウの声がでかすぎて、周りの視線を集めているし。
勿論、そんなことにはお構い無しのリュウだけど。