もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
乗せられたというよりは、放り込まれた私が乗っているのは、黒塗りの高級車。
いかにもって感じにため息が出る。
とーちゃんの仕事がさ……リュウのお父さんの会社なんだけど……それが、こんな感じだって予想はしてたよ。
でも、私だって少しの希望は持っていた。
実はIT会社ですとか、ベンチャー企業なんだとかって、ドッキリ的な台詞を期待してたんだけどな。
いかにも車に放り込んだ私を、これでもかってくらいの勢いで、奥へと押し込んだリュウは
「いつもの店」
と、運転手に告げた。
ここで、リュウがただのお金持ちのボンボンなら、「かしこまりました。お坊っちゃま」くらいの返事があるんだろうけど、それも私の期待そのままで、運転席から聞こえてきたのは「あいよ~」という野太い声。
「純麗ちゃん、帰るって何?」
車が発進したと同時に睨まれる私。
あーそうなんだ。
私が、親しみを持てたのはこのせいだ。
リュウに初めて会った時、私はリュウに対して親しみを持てた。
というか、親近感が沸いた。
安心感って言ったほうがいいかな?
兎に角、そう思った理由が今わかった。
いつもは、おちゃらけていて、話し方なんか瑠伊そっくりなんだけど、カラオケでのリュウは違った。
時折、垣間見えた冷静なリュウ。
そんなリュウの瞳が、とーちゃんと同じだった。
何を見ているのかわからない、寧ろ何も写してはいないような冷たいその瞳に私は親近感を覚えたんだ。
そして、今のリュウもそんな瞳をしている。
こんなことに親近感が沸いちゃう私ってどうよ?なんて思うけど、それは仕方ない。
だって、私の世界はすべでがとーちゃんだから。
どんなことも、物差しはいつもとーちゃんだったんだから。