もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
車が止まったのを確認するかのように、リュウの視線は一度窓の外へと向けられたけど
「買い物に行くって約束したよね?それなのに帰るって何?」
という、言葉と共に再び私のもとへと戻ってきた。
こんな風に睨まれたって、怯んだりしない。
だって、この瞳はとーちゃんと同じなんだから。
そうとわかれば怖いものなんかない。
「いきなりキレられてるってか、機嫌悪くなられる意味がわからないし」
もともと、リュウに怯えていたわけではないんだけどね。
ただ、余りにも突然のことに驚いただけ。
「あぁ、それは仕方ない」
「はっ?!何が?」
「だって、旨くなかったから」
「はっ?!だから何?」
「あの店の季節限定商品だよ!旨くなかったんだけど?すっげぇ、期待してたのに、何あれ?俺のワクワクした気持ちを返せっつーの!」
「何?それなの?それが理由なわけ?」
この男は一体……
絶対に彼女なんていないだろうな。
「もういいわ。早く買い物行こう。馬鹿馬鹿しい。何で止まってんのか知らないけど、さっさと目的地に行ってよ」
「馬鹿馬鹿しい?俺が?何で、今度は純麗ちゃんが怒ってるの?あぁ、わかった。純麗ちゃんも我慢してただけで、ムカついたんでしょ?腹立つよな。あの店」
負けてしまう。
リュウと話していたら、何故だか物凄い敗北感。
「いいから、車どうにかしてよ!」
「車?何?」
さっきの冷たい瞳は嘘のように、首を傾げるリュウ。
「目的地に早く連れてけって言ってるの!」
「着いてるけど?」
「そう、ならいいの……はっ?」