もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~


「そうそう、このムカつくやつがジュン。って、えっ?何で知ってんの?」



リュウが横でぎゃぁぎゃぁ騒いでいたけど、なぜか私の視界にはジュンしか写らなくなってしまう。



「また会ったな。2度と会わないように避けられると思ってたけど、こんな偶然もあるんだな」



「それっ……」



「俺は会いたかった」



「……っ」



あの日、カラオケから帰ったあの日、私は2度とジュンには会わないと決めた。



連絡が来ても出るつもりはなかったし、もう関わりは持たないと決めたから、ジュンの声に立ち止まらなかった。



それを、わかっていたの?



だから、追いかけてこなかったの?



ジュンが囁くように言った“会いたかった”が、頭の中でリピートされる。



「2人の世界に入るんじゃねぇよ!俺様だっているんだ!しかも、純麗ちゃんが泣きそうな顔してるし。おい!ジュン!やめろよな」



リュウの言葉にハッと我にかえる。



私、今、泣きそうな顔してんの?



「おい!ジュン!どういうことだよ?!何、泣かそうとしてんだよ!」



「はっ?俺はただ、返したいものがあるから会いたかったって話をしただけだろ?」



なんだ。



そうだよね。



ジュンは金を返したかっただけ。



その言葉を聞いて、一気に冷静になれた。
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