もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~

けど、その言葉はジュンによって遮られてしまう。



多分“か”ってのは言えたと思う。



もしかしたら、“え”も言ったかもしれない。



ただ、その辺りで完璧に声が被っていることに気付き、続きを言うのをやめた。



「ブランド好きな女は、お前の周りにいる奴らだろ?」



すこし馬鹿にしたような物言いのジュンに、またしてもリュウがムキになる。



「はっ?女も知らないお前に言われたかねぇよ!」



「知らないってなんだよ?」



「ここで言っちゃっていいのかな?ジュンがさくらんぼ少年ってこと!」



「えっ?」



思わず出てしまった。



ジュンってそうなの?



私より年上だったよね?



それで、それで、そんなんなの?



それって……



「おい!違うからな!!」



「えっ?」



余りにも冷静に私を見つめるジュンに、何だか急に恥ずかしくなってくる。



この場合、恥ずかしくなるのは、ジュンなはずなのに。



ジュンは私へと歩みより、


「リュウは嘘しか言わねぇ。真に受けるな」


と、耳元で囁いた。



「う、うん。わかった」



こんな風に言われたら、「うん」って言うしかないけど、だからか!なんて、頭の中では妙に納得していた。



私がジュンにラブホに連れて行かれたとき、ジュンは私に手を出さなかった。



それは、出さなかったんじゃなくて、出せなかったんだって。



「信じてねぇだろ?」



「……い、いや」



「信じてないなら、試してみるか?」



「はっ?」



私は目の前に伸びてきたジュンの手を避けるように、一歩後ろへと下がる。
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