もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
「な、何言っちゃってるわけ?」
かろうじてジュンの手は避けきれたものの、完璧に動揺している自分に尚更焦る。
「こういうのは試してみるのが一番だろ?」
「はっ?馬鹿にしてんの?」
また、どうせそうなんだ。
私が“ウリ”なんてしてるから、“俺とくらい簡単だろ?”なんて、考えなんだ。
「馬鹿になんてしてねぇよ。寧ろ、馬鹿にされてるのは俺だし……」
「私がいつ馬鹿にしたのよ?」
こんな時にはさ、リュウは助けてくれたっていいと思う。
てか、助けるべきだと思う。
でも、リュウはそんな私の心情を察してくれるはずもなく、
「えっ?試すの?俺も混ぜて!」
なんて、ぬかしてる。
「話がややこしくなるから、リュウは黙ってて!」
私の大きな声に不貞腐れたリュウは、スタスタとその場から立ち去ってしまう。
助けてくれないなら、いないほうがマシか……
「アイツはホントにうぜぇな」
「確かに」
でも、そんなリュウを最近可愛いって思い始めている。
瑠伊みたいで、憎めない。
「どうすんだよ?これから、試すか?俺の上がりの時間は……」
「試すわけないでしょ!いい加減にしてよ」
つい、大きな声を出してしまう。
それは、誰よりも気にしているから。
体を売っているってことを馬鹿にしているのは、ジュンでもリュウでもなく、私自身なんだと思う。
こんな状況で、そんなことに気づいてしまうなんて、なんだかやりきれない。
結局、私自身が誰よりも“偏見”って意識が強かったらしい。