もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~

夢を見た。



昔の記憶のような、そうじゃないような、夢を見た。



まだ、朦朧とする意識をハッキリさせるために体を起こす。



……ママの夢。



ママが死ぬ時というか、殺された夢。



私のママは事故で死んだらしいから、殺された場面なんて過去の記憶なはずはないんだけど、何故だかそれがただの夢とは思えなかった。



夢のなかでの光景が、余りにもリアルで、感情までもがリアルだったから。



そんな気持ちになったことがあるみたいに、懐かしささえ感じた。



リュウになんて抱きしめられたせいかな……



そうだ!リュウ!



私、あのまま寝ちゃった?



昨日のことを何度思い返してみても、私の記憶はリュウに抱きしめられたまま途切れている。



「純麗ちゃん、やっと起きた?おほよう」



あぁ、急に頭が痛い。



おほようって何?



「朝から、突っ込まなきゃいけない?」



「えっ?何?純麗ちゃん、寝ぼけてる?突っ込むって……それ、俺の台詞だし。って、いうか、突っ込まれたいってこと?え?違う?純麗ちゃんって実はそうなの?大胆すぎるよ!私、照れちゃう。イヤン」



「やめて。朝から下ネタ満載な上に、私が何だって?しかも、何でリュウが女の子になって、照れてるわけ?」



「照れるに決まってるわ。いくつになっても、女なんだから。こんなこと言わせないでよ!」



溜め息しか出ない。



こんな奴の前で泣いたなんて、悔やんでも悔やみきれないし。



「えーー自分で振ったくせに無視?今度はまさかの放置プレイ?勘弁してよ」



大きな溜め息を吐くリュウだけど、勘弁してほしいのは、こっちだ。


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