もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~


「ほら、早く出掛ける準備して!」



「は?」



「朝ごはんは食べる?いらないよね?お腹が空いたら、途中で何か食べよう」



「リュウ……何なの?話が見えない」



完璧に目が覚めてしまった私は、ベッドから降りた。



本当は二度寝したかった。



というか、いつもなら必ずしている二度寝。



私の至福の瞬間なのに……



「純麗ちゃん、取り敢えず急ごう!時間がないから」



「だから、どこに行くわけ?で、時間がないって何?」



寝起きは機嫌が悪いの。



二度寝出来なかったんだから尚更……



それなのに、意味不明のリュウ。



イライラは募るばかりだ。



「ジュンの所に決まってるじゃん!」



「はっ?」



「純麗ちゃん、まだ寝惚けてる?昨日のこと忘れちゃった?」



いや、覚えてはいるけど……



昨日の記憶を何度思い返してみても、ジュンの所へ行く約束なんてしていないはず……



「忘れちゃったなら、それでもいいから早く準備して!」



「昨日のことは覚えてるけど、そんな約束した?」



「約束ってわけじゃないけど……ジュンのとこに行く流れじゃん!」



「流れ?」



「だから~」



面倒くさそうに顔を歪ませるリュウ。



私が悪いのか?



「純麗ちゃんはジュンのことが好きでしょ?それなのに、妙な誤解のせいで、純麗ちゃんはジュンに別れを告げられた。だから、誤解を解きにいかなきゃ!ねっ?わかったでしょ?それなら、さっさと準備!準備!」



リュウは私の背中を押して、洗面所に押し込もうとする。


< 285 / 342 >

この作品をシェア

pagetop