もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
「名探偵リュウ様の見解では、純麗ちゃんが山さんを好きになるのは当たり前だった。まぁ、純麗ちゃんが好きって思い込んでるだけで、本当は依存なんだけどね」
「ち、ちょっと待って!」
「なんだい?」
髭なんてないのに、髭を撫でるような仕草をしながら、リュウは足を組み換える。
馬鹿なリュウに……おふざけ満載のリュウに……この時ばかりは安心してしまう。
だって、こんな衝撃的な話を真顔でされていたら、私はどうなっていたかわからないから。
「とーちゃんが……私に依存させるように、好きって思うように、仕向けたってこと?」
「だな」
「なんで?なんで、そんなことするの?」
「純麗君。そこまではさすがの私にもわからないな。名探偵だと言っても、人の気持ちをわかることなんて不可能だからね」
そうなんだけど、私の頭の中は“どうして?”ばかりがぐるぐると回る。
リュウが言っていることは、あくまでリュウの考えであって、本当にそうだと決まったわけじゃない。
それなのに、どうしてこんなにも不安なんだろう。
勝手に言ってればいいとリュウの言葉を話し半分に聞けないのだろう。
まだふざけて名探偵の真似事をしているリュウに、突っ込むことすらできない私は会話を続けることすら出来ずに、ただそこに座っていた。
「でも、信用しないほうがいいね。俺は山さんのこと嫌いなわけじゃないけど、純麗ちゃん寄りで言わせてもらうと、何かある。純麗ちゃんにとって良くないことがきっとある」
「や、めて……」
これ以上はやめて。
そんな風にいきなり真面目に言われたら、どうしていいのかわからなくなる。
そんな風に真剣に見つめられたら、ますます不安が私の心を支配してしまう。
とーちゃんしかいないのに。
私が生きてきた世界にはとーちゃんしかいなくて、それはこれからも変わらないことなのに……
「純麗ちゃん、大丈夫。俺は純麗ちゃんの側に居るよ。なんたって友達も第一号なんだからね」