もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
「マジ、ウザいって!聞いてるんだから、さっさと答えて!」
私があまりにもヒステリックな声を出したせいか、リュウはやっと普通の話し方をしてくれる。
「俺は悪くないから。さっき言ったでしょ?ジュンのとこに行くって」
「えっ?だって、それはやめたんじゃないの?」
「俺、止めたなんて言った?」
言ってはいないけど……時間が間に合わないからって急いでいたのに、話し込んじゃったから、その話は無しになったのかと思ってた。
「言った?」
リュウは顔を近づけ、少し怒ったように聞いてくる。
「……言ってないね」
「勘違いしてキレたのは純麗ちゃんだよね?」
「……はい」
「誰が悪いと思う?」
「……私です」
リュウと目を合わせないように、そう答えると、
「わかったなら、宜しい」
と言いながら、私の頬を両手で包み込む。
……か、顔が近いんだけども。
ニタっと笑みを浮かべるリュウから、なるべく距離を取りたい私は、リュウの両手に自分の手を重ねた。
なのに、いくら引っ張っても離れないリュウの手。
頬に吸い付いているかのように、びくともしない。
「手離して」
「離したら、急いで用意してくれる?」
「ジュンに会いたくないし」
「純麗ちゃんの意見は車の中で聞いてあげる。どうする?用意する?しない?」
あぁ、この目だ。
初めてリュウに会った時に、何故か親しみを感じた訳。
ジュンにも共通して言えるだけど……
今まで人と距離を保って生きてきた私が、こうも簡単に二人の男と近づいたのはこの瞳のせい。
顔は笑っていても、怒っていても、きっと泣いていても……
なんの感情の色も感じない、冷たくて悲しい瞳。
とーちゃんと同じこの瞳。