もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~

「バーガーでいい?バーガー!なんなら、ポテトとナゲットも付けちゃうよ!飲み物はシェイクだよね?シェイク以外頼むなら、他の物食べろってくらい、バーガーには欠かせないよね」



言うまでもなく、私は急いで用意をする選択肢を選んだ。



そうしなかったら、私の頬には夜まで……いや、用意すると言うまで永遠に吸い付いていたであろう、リュウの手。



考えただけでも恐ろしい。



でも、恐ろしかったリュウは車に乗り込むまでで、運転手付きの高級車に乗ってからは、いつも通りウザイキャラ満開のリュウだった。



今だって、こんな立派な車に乗りながら、バーガーの素晴らしさについて語ってる。



なんとも言えない、この不釣り合い加減が怖いと言えば怖いけれど……



「ねぇ、純麗ちゃん、聞いてる?」



「えっ?」



「だからぁ~シェイクは何派?」



「バニラかな?」



本当はシェイクはあまり好きじゃない。



なんでアイスじゃダメなのかわからない。



どうして、アイスもどきをストローで飲まなきゃいけないのかわからない。



だって、あんなに冷たいものを一気に飲み込んだら、こめかみの辺りがキーンとしてしまう。



口の中だって、冷たすぎて味なんてわからなくなってしまうし。



「バニラ?えっ?バニラ?」



でも、そんなことは言えない雰囲気だよね。



バーガーとシェイクの相性について力説してるリュウに、私は紅茶がいいなんて言えない。



言ったら、面倒なことになるに決まってるもん。


「えっ?バニラ……じゃ、ダメだった?」



バニラと答えた瞬間に大人しくなるリュウに少し焦る。



もしかして、もうバニラ味なんてない?



シェイクに興味のない私は、どんな種類があるのかすらわかっていない。



だから、一番無難な物を選んだつもりだったのに……



リュウはしばらくの間、無言になり


「さすが!」


と、いきなり大声を上げた。



あまりにも嬉しそうなリュウの眼差しに、私は口を半開き状態。



さすがってことは、間違いではなかったみたいだけど、よくわからない。



何がさすがなのか、まったくもってわからない。



でも、そんな私の驚きの疑問はすぐに解決された。



「初めはバニラから始まるよね。で、イチゴやコーヒーにはまりながら、シェイクの虜になっていって、季節限定とかにも挑んでみるけど、最後はやっぱりバニラで落ち着くよね。やっぱりかぁ~みんな、そうなんだな」



「……っう、ん。」



「じゃあ、今日はバニラでいいね。シェイクを二人で噛み締めよう。いや~嬉しいな。だって、ジュンなんてさ、俺はコーヒーが好きだから始めからずっとコーヒーだって言うんだよ。あの男、何もわかってない!」



「そ、そうなんだ」



私はシェイクが好きじゃないから、ジュン以下だなんて言えるはずもなく、気まずさから、視線を窓の外へと逸らした。
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