もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
どこへ向かっているのかわからないけど、車は三車線の大きな道路を走っていた。
「そういえば、純麗ちゃん」
興奮しながら力説していたリュウの声のトーンが突然変わる。
私は視線をリュウへと戻し、表情を読み取ろうとする。
こんな風に人が突然、声質を変えるときは、大抵良くない話。
身構えるように、その瞳を見つめても、リュウはそんなのお構い無しに私を見つめ返しながら、言葉を続けた。
「言いたいこと?聞きたいこと?あるんじゃなかった?」
「……そんなこと?」
悪い話だと思っていた私は、リュウの言葉に拍子抜けしそうになる。
そして、安堵のせいで、思わず本音が……
「えっ?」
「いや、何でもない。聞きたかったことはある」
「うん。何?」
リュウは運転手さんに「次の信号右で、ドライブスルー入って」と伝えると、私に笑みを向けながら視線を向けた。
「いや、ジュンの所に行くんだよね?」
「そうだよ。今更、嫌だとか言っても無理だからね。ジュンの誤解を解くのは、純麗ちゃんのためは、勿論だけど、俺のためでもあるわけ」
「リュウのため?」
「何人か居たわけよ。ジュンと仲良くするのは、俺に近づきたいからっていう可愛子ちゃんが!その中にジュンが好きになった子がいてさ……俺が悪いわけじゃないのに、俺っち、恨まれてるわけ」
「リュウってモテるんだ」
「まぁ~モテるのは確かだけど、その可愛子ちゃん達はぁ、俺の付属品目当てなわけさ」
「付属品?」
リュウは真っ直ぐに目を見て話してくれることが多い。
それなのに、突然離れて行った視線。
その視線はどこを捉えるわけでもなく、フワフワと宙を舞っていた。
「その話は、また今度。ほら!着いたし!純麗ちゃんは何にする?」
消えそうなくらい儚げな表情をしたのは一瞬で、すぐにいつものリュウへと戻っていた。
そして、リュウが指差す先には、バーガーのメニューパネル。