もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
「で、話の続き。なんだっけ?」
5つも買ったハンバーガーを大事そうに抱え、笑みをこぼすリュウ。
「誤解を解くためにジュンの所へ行くのはわかった。でも、朝は時間がないとかって言ってたくせに、今更行くの?明日でもいいんじゃないの?明日なら、きちんと早起きするし」
「純麗ちゃんは高校生だってこと忘れてるよね。今日も明日も学校あるんだよ?わかってる?」
「リュウに言われたくないし」
「いっただきまーす」と言いながら、1つ目のハンバーガーにリュウがかぶりついた時には、私は既に食べ終わり、飲みたくもないバニラシェイクをちびちびと飲んでいた。
「俺はいいんだよ!学歴なんか必要のない世界で生きるんだから。でも、純麗ちゃんはダメだよ。って、説教地味てきちゃったね。やめだ!やめっ!」
「そうしてくれると有難い」
「で、脱線した話を戻すと……ジュンは今日の午前中までしか、あの街にいなかったわけ。午後から、何日間は海に籠りっきりだから」
「海?」
リュウの言葉に、ジュンに拉致されたあの海を思い出す。
「何も聞いてない?ジュンとは海に来たんじゃなかった?」
「来たけど……何も聞いてない」
そう、私は何も知らない。
知っていることと言えば、名前と年齢くらい。
好きかもしれないのに、そんなことしか知らないって……
やるせない気持ちでいっぱいだった。
「ジュンはね、ちょっとした有名人なわけ」
「……」
私は食い入るように、リュウの言葉に耳を傾けた。
「小さい頃から水泳をやっていてね、高校までは全国大会に出るのは当たり前、オリンピック選考会でもメダルを取ったことがある人物なのだ」
「それって、全国3位以内ってこと?」
「そうだね。でも、後一歩でオリンピックはダメだったんだけどね」
「えっ?凄い!じゃあ、今も……」
凄すぎる!
オリンピックなんて、特別な人だけの特別なもので、一般人の私には無縁なものだと思っていた。
それでも、暇なときはテレビで見ながら感動したりなんかしてたんだけど。
そんな特別な人が、こんな身近にいたなんて。
「やめたよ」
「えっ?」
「今はやってない」