もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
初めての告白?!
リュウの後に続いて車から出ると、潮の香りが体全体を包み込む。
ジュンに拉致された日よりも、その匂いが濃く感じる。
「純麗ちゃん、行こう!」
「あっ、うん」
ジャリジャリと音を鳴らしながら足を進め、リュウの隣へと並ぶ。
「ライフセーバーって何?」
「えっ?何?」
風が強くて、車内と同じ音量では、私の声はリュウに届かないみたい。
「ライフセーバーって、なに?」
「あぁ。見たほうがわかりやすいと思うけど」
砂浜に足を踏み入れた途端に何故だか、心拍数が早くなる。
「ほら、あれ。ビーチを守る人?管理する人?みたいな感じ」
私が住んでいる、あの界隈から海へ行こうとすれば、近いところでも2時間近くかかってしまう。
だから、こんな風に潮の香りを嗅いだり、砂の音を聴きながら歩いたりすることは慣れていない。
“海”っていう自然が日常の一部だったり、身近にあって、ごく当たり前のことなんて人もいるだろうけど、私にとっては非日常的なこと。
そのせいか、体の調子がおかしい。
具合が悪いとかではなくて、興奮しているんだと思う。
この非日常的な“海”を目の前にして、私の体はいつもと違う。
心は冷静なつもりでいても、体は嘘を吐かない。
「俺が話すよりジュンに聞いたほうが早いと思うよ。俺もいまいちよくわかってないから」
「そう」
目の前に広がるビーチに、上半身裸の男が何人か……
その光景に釘付けになってしまった私は、横でごちゃごちゃと喋っているリュウの声は耳に届いていなかった。
男の体なんて珍しくない。
その辺の女子高生よりは、見慣れているほうだと思う。
それなのに、格好いいと思ってしまった。
こんがりと焼けた肌に、逆三角形の整った骨格。
そこに、絵に書いたように綺麗な筋肉が付いている。
不覚にも、そんな光景にときめいてしまう。