もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
「みんな似たようなので、どれがジュンかわかんねぇな。おっ!あれじゃないか、あれ!」
違うよ、リュウ。
ポールを砂浜に立てている人はジュンじゃない。
ジュンは……
一人で海を眺めている。
波打ち際に立ち尽くし、ただ真っ直ぐに前を見ている。
そこに、海以外の物が何かあるかのように、切なそうに……
そして、強い眼差しで海を見つめているのが、ジュンだよ。
「あれれ?この間の高校生じゃない?私服を着てると、ますます若く見える!」
吸い込まれるように、ジュンの元へと動いていた足は、突然の大声によって止まる。
「おっ!ミッキー!相変わらずバカ面だな」
「なんだ、リュウかよ!お前には負けるけどな……って、またリュウのかよ?」
私の左横に登場したのは、ジュンに拉致られた時に会った大声男ことミキヤだった。
年上だから、一応ミキヤ君って呼んだ方がいいのかな?
「ミッキーまで、いきなり勘違いかよ!俺はこの子の父親と知り合いなの!今では仕事上の関係?みたいな?」
何が仕事上の関係だよ。
ホントに口が達者な男。
「俺もってことは、ジュンも?」
「そうそう。今日はその誤解を解きに来たわけ」
「なるほど~」
ジュンは割りと無口な方で、話し方だって落ち着いているのに……
なんで、ジュンの周りの奴等はどいつもこいつも、ベラベラ喋るんだ?
聞いてるだけで疲れる。