もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
“類は友を呼ぶ”なんてのは嘘なのか……
それか、実はジュンも隠れお喋りってことも有り得る。
「おーい!ジュン!こっち来いよ!」
「ち、ちょっと!ミキヤ君!」
ミキヤ君がジュンに向かって挙げた手に、私は勢いよく掴みかかる。
「リンちゃん、じゃなくてジュンレイちゃん。君付けで呼んでくれた?」
まだ、ジュンに来られたら困る。
あんな別れ方をしたんだから、私にも心の準備ってのが必要で……
リュウに助けを求めようと思ったのに、リュウは携帯電話を耳にあてながら、私達からどんどんと遠ざかってる。
「もう一回呼んで!」
ミキヤ君は掴みかかった私の右手を、両手で握りしめ、じっと見つめてくる。
気のせいか、顔がどんどん近づいている気が……
「そいつの名前はスミレだ」
「はっ?」
私の背後から聞こえた声に、ミキヤ君は返答をしながら視線を移す。
私とミキヤ君は向かい合っている状態だから、私の背後ってことは、ミキヤ君からしたら、視線を上げるだけで視界に入る場所に、声の主はいる。
「スミレだ」
その声の主が誰なのかはわかっているけど……
「ジュンレイちゃんじゃないの?」
再び戻ってきたミキヤ君の視線で、今の言葉は私に発せられたものだと理解した私は、コクリと頷いた。
「えっ?なんで?」
何でって……正直、説明するのは面倒くさい。
「ジュンちゃんじゃなくて、スミレちゃんって呼んだ方がいいの?」
「そうしろ。理由は面倒くさいから聞くな」