もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
「リュウが好きとか、仲良くなりたいってわけじゃないんだな?」
向かい合った瞬間に発せられた声は、先程と同じく不機嫌な声で、そのことに少しだけ安心した。
「リュウのことは好きじゃないっていうか、ジュンに拉致された後に知り合ったし。てか、拉致したのジュンだよね?ジュンにしても、リュウにしても、私から近づいたわけじゃないのに、なんで誤解されるわけ?意味わかんないんだけど!」
そう。
よくよく考えてみたら、ジュンが私を拉致ったのに、何で私がリュウ目当てに近づいたなんて思われなきゃいけないわけ?
今更、気付くなんて遅いけど……
今更、腹を立ててもしょうがないけど……
どう考えても間違ってる今までの状況に、今更気付いた自分に腹が立った。
「まぁ、そうだよな……でも、あれは同意のもとだ」
「何が?」
「拉致なんかしてない。同意のもと、連れてきた」
「はぁ!?何が同意?どの辺が同意?無理矢理でしょ?私に一言でも聞いた?海に連れて行くとすら聞かされてなかったけど!」
“冷めてる”なんて言われることが多かった私は、どちらかといば、物事を客観視するタイプの人間だと思う。
自分が問題の渦中にいたとしても、他人事のように聞こえてしまう言葉が、所謂“冷めてる”らしい。
瑠伊に言われて、確かになと納得できた自分の性格。
その事に気づいてからは、より一層冷静な目を持てていたはずなのに……
今回のことは、何で気づかなかったんだろう。
ジュンに誤解されることは、明らかに理不尽なのに……
考えれば考えるほど、自分の抜けように怒りが沸き上がってくる。
「何キレてんだよ!?」
怒りが沸々と沸き上がっているときに、嘘なんかつくからだけど!と思い切り怒鳴ってやりたかったけど、そんなことをしたら、益々冷静な自分じゃなくなる気がしてやめた。
「……」
「別に俺の勘違いならいいんだ」
「はっ!?」
「勘違いなら別に問題はない。じゃあ」
右手を軽く上げ、ここから立ち去ろうとしているジュン。
やっぱり私は私ではなかった。
この時の私は“冷めてる”と呼ばれる私ではなかったんだと思う。