もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~


ジュンに出会ってから、私が私でなかったために動いた関係。



それを、私は“運命”だなんて思わない。



“運命”なんてものは存在しない。



私が私でなかったと言っても、私が感じ、私が動いた。



いつもと違うだけで、何かに突き動かされたわけでも、強制されたわけでもない。



「ジュン!待って!」



ジュンが足を進めた方向に向かって走り出す。



もう、止められない。



頭ではとーちゃんが好きなんだけど、私の体はジュンへと向かって動き出した。



きっと、もう止まらない。



「ジュン!待って!ジュン!」



またしても砂に足をとられた私は、思い切り転んでしまう。



ジュンを追いかけると転ぶなんて……気持ちが折れそう。




「そんなに何度も呼ばなくたって聞こえてる」



あの時と同じ。



ジュンに拉致された時と同じように、頭上からジュンの声が降ってくる。



「大丈夫か?」



見上げた先には、確かにジュンがいる。



「ほら、捕まれよ」



私の前に差し出された手に触れた瞬間、私は口を開いた。



止まらない。

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