もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
「そんな簡単なことじゃない」
「はっ?」
穏やかだったジュンの顔は、私の一言で歪む。
「リュウのこと……勝手に誤解されて、酷いこと言われて、傷ついた」
「あぁ、それは、悪かった」
「謝ってほしいから言ってるわけじゃない!」
言われたから、謝りましたみたいなジュンの態度に腹が立って、声が大きくなってしまう。
「なら、なんだよ!もったいつけないで、さっさと言え!」
それに便乗するようにジュンの声も大きくなって行く。
「言い合いがしたいわけじゃない。いつも、会うたびに……言い合いしたいわけじゃない。傷つきたいわけじゃない。私の言ってることをわかって欲しかっただけ。それなのに、全然わかってくれないから、腹が立つ」
「……」
「傷つくなら会いたくない。今までは、そうしてた。でも、ジュンには傷ついても会いたいって思う自分がいる。でも、それってすごく勇気がいることで……」
ジュンを目の前にして喋りながら、やっと自分を認められそう。
私はとーちゃんが好き。
それは紛れもない真実だけど、ジュンを好きなのも真実だ。
とーちゃんに対しての好きは、満たされぬ思いを要求する気持ちが強いもので、ジュンに対しては無条件に惹かれてしまう。
どちらを“恋”や“愛”と呼ぶのかはわからないけど、私の中ではどちらも真実なんだ。
「好き……好きなんだと思う。ジュンに惹かれてる。だから、酷いこと言われて傷ついても、こうしてここにいるじゃない!」
なんでキレ気味?と自分で突っ込んでしまいたくなるような、生まれて初めての告白は潮の香りと共に、私の記憶に刻み込まれた。