もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~

よく聞くアナウンスの声を暫く聞いた後、決心した。



大丈夫。



いつものことじゃん。



男に迎えに来てもらって、美味しいご飯を食べて抱かれる。



そして、お金を貰ったら、ホテルに帰れる。



こんな時に役に立つ男が沢山いるなんて、ラッキーだよ。



男の名前を携帯画面に表示させ、発信ボタンに手を掛けたその時



「どこ行ってんだよ!勝手にいなくなるな!」



バイクのエンジン音と共に大きな怒鳴り声が聞こえてくる。



ジュンだ。



声のするほうを聞き分け、視線を向けると、バイクを停め、こちらに向かって足を進めるジュンの姿が目に入る。



「てめぇは何なんだよ!」



男に抱かれなくていい安心感か、ジュンに会えた嬉しさかわからないけど、零れ落ちそうなほどの涙が沸き上がる。



「何やってんだよ!お前は!!」



1メートルくらいの距離を保ったまま、ジュンは再び荒々しく声をあげた。




「こんなとこで何してんだって聞いてんだけど!?」



「……バス停探してた」



「やっぱり帰るつもりだったのかよ」



次は、やっと聞き取れるくらい小さな声で呟くジュン。



焦ったり、真剣だったり、怒ったり……少しだけ悲しそうだったり、表情を見ているだけで、次に聞こえる声のトーンがわかりそう。



「なんで、何も言わないで帰ろとした?お前が何考えてるかわかんねぇ」



いやいや、それはこっちの台詞ですけど。



「帰りたいなら帰ればいい。好きにしろ」



踵をかえそうとしたジュンに慌てて声をかける。



「ち、ちょっと!置き去りにしたのはジュンでしょ!?何も言わずに置き去りにされたら、1人で帰るしかないじゃん!リュウにも連絡つかないし」




「はっ!?何でそこでアイツの名前が出てくんだよ!」

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