もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
熱いカラダ
「私、手土産の1つも持ってきてないけど」
「別に気にしねぇ。それよりささっと上がれ」
私は今、ジュンの自宅の玄関にいる。
希望通り、ジュンに抱き締められた私に、甘い時間はそう長くは続かなく……
すぐに、いつものジュンに戻ってしまった。
初めての抱擁にも関わらず、その余韻に浸ることすら許されない。
「1人で帰るのか?」
「はっ?」
ジュンの場違いな言葉に、思わず喧嘩腰になってしまう。
だって、さっき言ったよね?
私を1人にしないでって言ったよね?
そしたら、ジュンは「あぁ」って答えたよね?
それなのに、私は1人で帰るわけ!?
「急いでんだ。さっさと答えろ」
「帰れるなら1人で帰りたいけどね!でも、携帯しかないし、土地勘もまったくないし、残念ながら、1人では帰れそうにはないんだよね!!」
私達の距離は、まだ抱きあえるくらい近いものなのに、一気にジュンの心が遠くへ行ってしまう。
私にも遠くへ行けと言わんばかりに、歪められる表情。
「何、キレてんだよ!」
「だ、だって!」
剥きになって、行き場を無くした気持ちを説明しようと思ったのに、私にはそれすら許されない。
私の言葉に被せられたジュンの声。
「まぁ、それはいい。俺には時間がないんだ。お前はどうすんだ?乗っててもいいけど、真っ直ぐ家には送れねぇぞ。いいのか?さっさと決めろ」
それはいいって何?
私がキレた理由はどうでもいいわけ?