もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
それとも、私のことなんてどうでもいいって訳?
言いたいことは山ほどあったけど、全部を飲み込んで、「一緒に帰る」と返事をした。
私を蔑ろにしてまで、急がなきゃいけない用事とやらをこの目で見てやろうじゃない。
……なんて、思わなければ良かった。
まさか、用事は自宅に帰ることだったなんて……
「や、やっぱり外で待ってるよ」
「暑いだろうが。しかも、この辺は治安もよくねぇ」
玄関で入る入らないを続けて数分。
とうとう、お家の人に気付かれてしまった。
「ジュン?帰ってきたの?」
ガチャリとドアが開き、出てきたのは……可愛らしい女の人。
「動いて大丈夫なのかよ?」
ジュンは慌てて、その人に駆け寄った。
「今はだいぶ落ち着いたから平気よ」
年の離れたお姉さんか、もしくはお母さん。
そう断言できたのは、口元が何となくジュンと似ていたから。
「ん?その子は?」
ジュンの体から顔を除かせた女の人と、バッチリと目が合ってしまう。
「彼女。いいから、中入って座るぞ。お前もさっさと来い」
ジュンはチラリと私に視線を向け、すぐに女の人と共にドアの向こうへと消えて行った。