もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
今、何て言った?
“彼女”って言わなかった!?
聞き間違い!?
いや、確かに言った。
突然の自宅訪問にパニックだったからって、手土産なしに納得いかないからって、言わない言葉が聞こえるはずなんてない。
告白の返事聞いてないのに……
いきなり、彼女か……
えっ!?彼女!?
うん。彼女ってアレだよね!?
好きな人同士が付き合った時に呼び合う名称。
……てことは、私とジュンは、もう既に付き合ってるの!?
それは、マズイ。
だって、私はとーちゃんも好きなわけで、それはリュウ曰く“好き”ではないらしいんだけど、私の中ではまだハッキリと言い切れるものではないし。
他に好きな人がいるのにジュンと付き合うってどうなの!?
私の脳内は運動会をしてるような状態で、いや、戦争かもしれない。
どっちでもいいんだけど、兎に角、色んなことを一気に考えなきゃいけなくて、もう泣きそうなくらい、どうしていいかわからない状態だった。
「何してんだよ!ドア閉めれねぇから、さっさと来い」
イライラしたジュンの声にビクつきながら「はい!」と返事をして靴を脱いだ。
「ジュン、女の子には優しくしないとダメ。伸也さんみたく、優しいのが一番」
「アイツのどこが優しいんだよ!亜美がこうして具合が悪くなったって、駆けつけさえしないだろうが!」
「伸也さんは忙しいの」
「関係ねぇよ」
私が恐る恐る部屋の中へ入り、ドアを閉めると、そんなやり取りがされていた。