もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
「でも、喉が乾いちゃって」
「じゃあ、私がやります!だから、座っていて下さい」
半ば強引にお母様をソファーへと押し返した。
「そう!?じゃあ、お願いしようかな。今日は暑いし、ホットはやめて、アイスティーね」
「わかりました」
やっとソファーに腰を降ろしてくれたことに一安心した私は、グラスなどの場所を聞きアイスティーをテーブルへと運ぶ。
「勝手に冷蔵庫開けさせてもらいました」
「もちろん、それじゃないとコレだせないもの」と言いながら、私の持ってきたグラスを顔の横で傾ける。
この人は、仕草が一つ一つ可愛い。
一体、何歳なんだろう。
「それで、さっきの話なんですけど……」
私もやっと落ち着きを取り戻し、先程座っていた二人掛けのソファーに腰を降ろした。
「さっき?」
「はい。ジュンがわざと私を置いていったって」
「あぁ、それね。ジュンは私を一人にしないために、あなたをここに置いていったと思う。あなたがこんな風に私を気遣ってくれることを、あの子はわかってたんじゃないかな」
「でも、私とジュンは、出会ってから、それほど時間が経ってないというか……なんというか」
本当は出会ったばかりで、お互いのことをよく知らないって言いたかったけど、私の目の前で可愛らしく、アイスティーを飲む人は、ジュンのお母様で、その人に可笑しな誤解をされたくなくて、ハッキリと言えずにいた。
「人と人との間に時間なんて関係ないんじゃない?」
突然、雰囲気が変わったお母様は真っ直ぐに私を見据える。
その眼差しの強さに、声さえもでない。
「出会った瞬間、感じるものがあると思う。私はね、“運命”ってものを信じるたちなの」
こんなに可愛らしい人のどこに、これほどの強さが隠されていたのだろう。
きっと、こっちが本当のお母様の姿。
根拠なんてないけど、ただそう感じていた。