もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
もうスキすぎて 2
ヤリ逃げ女
いつもとは違うとーちゃんの声にヤバイと感じ、慌てて家までの道を走った。
何がヤバイのかはわからない。
けど、本能的にそう感じた。
ジュンの存在さえも忘れてしまいそうなくらい、焦っていた私はジュンに何も言わずにホテルを飛び出す。
そして、とーちゃんに問い詰められている現在に至るのだ。
「どういう関係だ?って、一晩を共にしたんだから、そういう関係だよな」
あの時は何も考えていなくて、帰ることに必死だったんだけど……
今、こうして冷静になると、ジュンのことが気になって仕方ない。
やるだけやって放置って……
私、最低だし。
とーちゃんと向かいあっているのに、やり逃げされたって泣いていたクラスメイトの顔を思い出していた。
いや、それは勿論女の子で、やり逃げされたなんて、男の口からは聞いたことがない。
「ジュンって奴は彼氏なのか?」
完全にジュン一色に染められていた頭の中。
とーちゃんの声によって、再び現実世界へと引き戻される。
「うん。ジュンは彼氏だと思う」
「なんだよ。その曖昧な言い方」
とーちゃんが何に対して、どう感情が揺れ動き、あんな声を出したのかわからない私は、恐れのあまり、曖昧な返答しかできない。
だって、あんなとーちゃん、初めてなんだもん。
今は、いつも通りに戻ったけれど、まだ、あの声が耳から離れない。
「彼氏でいいんだな?」
私の一言で、またあの声を出されると思うと……
防御本能ってやつが私を無口にする。
「純麗!」
「……う、ん」
「彼氏なら、今度紹介してくれ」
「えっ?」
怒られるとばかり思っていた。
「俺は一応保護者だろ?会う権利くらいはあるよな?!」
私をおちょくるような笑みを浮かべるとーちゃんがよくわからない。