もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
「今日は忙しい。夕方からリュウが来ることになってるからな。彼氏の話はまた今度だ」
そう言いながら、とーちゃんは私の腕を引き、自分の胸へと私の頭を押し付けた。
そして、段々と服の中へ入ってくる手……
体を離され、何の色もない瞳で見つめられたかと思うと、顔を近けられた。
その後の行動はわかっている。
私は何年もとーちゃんだけを見続けてきたんだ。
キスのタイミングくらいは、体が覚えている。
とーちゃんが頭を少し右に傾けた瞬間、私は「いやっ!!」と反射的に叫んでいた。
とーちゃんを拒んだのはこれが始めて。
ジュンと付き合ったせいなのか、リュウのことがあったからなのかはわからないけど、頭でどうこうじゃなくて、自然と体が動いた。
“嫌だ”と体が反応した。
とーちゃんはすぐに私に背を向け、部屋を出て行った。
どんな顔をしてたかなんて、怖くて確かめることすら出来なかった。
何も言わずに出て行ったとーちゃん。
足音さえも怒っているように聞こえる。
本当に捨てられるかもしれない。
そんな恐怖は付きまとっているけど、後悔はしてない。
いつもは胸が押し潰されそうになるあの扉の音も、今日は“孤独”の中に引きずり込まれなくてすんだ。
“彼氏”や“友達”って存在は、もしかしたら、人を強くするかもしれない。
そう思いながら、ソファーに体を沈め、瞳を閉じた。