もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
「す……ち、ん……すみれ……」
この声は、私のたった1人の友達だ。
目を開けなくちゃって思っているのに、瞼が重くて、なかなかリュウを視界にうつすことができない。
「純麗ちゃん!!大丈夫か!?」
私の体を揺すりながら、叫ぶリュウの声がいつもと違って、私は慌てて目を開く。
「ぎゃぁーーー!!」
目を開けた私の視界に写ったのは、腫れすぎて顔の原型を辛うじてとどめているって感じのリュウ。
それがリュウだとわかっているのに、思い切り叫んでしまった。
「えっ!?なに?どこか痛い?」
「痛くない!!その顔に驚いただけ!!だから、ち、近すぎ!」
「ホント?!ホントに大丈夫?痛いところはない?」
小首を傾げて、私の顔を除きこむリュウに、普段なら男のくせに可愛い仕草しやがってと腹立たしく思っていた。
でも、今のリュウは何をしたって不気味以外のなにものでもない。
「やっぱり痛いとこある?」
「や、ないよ……うん。痛いとこない」
リュウの顔はすべてが痛そうで、きっと体だって痛いとこだらけなんだと思う。
それなのに、私の心配ばかりしているリュウに涙がこぼれ落ちた。
「えっ?!痛くないのに泣いてるの?なんで?何か嫌なことでもあった?」
だって、それは私のせいでしょ。
「純麗ちゃん!!黙ってちゃわからないよ!」
それなのに、私のことばっかり……
「リュウ、ごめん」
「ん!?」
「それ、私のせい。巻き込んでごめん」
涙で視界は歪んでいるけど、リュウの腫れ上がった顔から視線をそらさずに謝った。