もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
「純麗ちゃん、言っとくけどこれはこっちの問題だから」
リュウの声色が変化した。
きっとここからは真面目な話。
「純麗ちゃんのことが理由で殴られたのは確かだけど、殴られたのはこっちの問題だから」
「意味が全然わからないけど」
視線を逸らさない私から逃げるように、リュウは視線を逸らした。
「普通バイトや仕事で失敗すると怒られる。事と場合によっては減給されたりクビになる。けど、俺のいる世界は違う。減給もクビもないかわりに落とし前をつける」
「だからって、顔がそんなになるまで殴らなくったって!!私への当て付けの為に顔ばっかりなんだよ!!」
納得いくはずなんてない。
リュウは私に責任を感じさせないようにしているのかもしれないけど、そんな説明納得できるはずもない。
「今回はそれが“落とし前”だったんだろうな」
「何言ってんの?!そんなの可笑しいじゃん!!あり得ないから!!」
「それが俺の生きる世界だ」
みんなどんな人間だって、自分の世界がある。
やって良いことと悪いこと、幸せの基準、お金の価値観……
生きて行く中で自分の世界が確立されて行く。
けど、そこには最低限の倫理観や法律なんかが存在する。
だから、世界観の違う人だってわかりあえたり、理解できたりするものなんだと思う。
リュウは?
リュウは……違う。
リュウの生きる世界は根本的な部分が違う。
だから、その中で生きてきたリュウとは理解しあえない部分が生じてきてしまう。
そのことが悲しいの?
リュウはその世界で生きることが悲しいの?
何の色も映さないようなリュウの瞳に、私は思わず抱き締めてしまった。
だって悲しいのは辛いから。
寂しいのは怖いから。