もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~

「や、ちょっと待って。まずは何から考えればいい?優先順位は?」



“やり逃げ”なんて言われて思い出したジュンのこと。



普通、好きなら片時も忘れないもんなんじゃないの?!



この間リュウと観た恋愛映画では、そうだったはず……



こんなんでいいのか私?



やっぱり付き合うべきじゃなかった?



いや、それよりも今は何をすればいいかを考えなくちゃ。



とーちゃんとの今後をきちんと考えるために、リュウに出ていってもらうか、2度とリュウがこんな顔にならないように、二人で策を練るか、“やり逃げ”されたと思っているジュンの誤解を解くか。



「純麗ちゃん、彼氏ができたからって友達を粗末に扱うつもり?俺の顔は誰のせいかな~」



「さっきまで責任感じなくていい的なこと言ってなかった?!」



「それは建前?!やっぱり彼氏優先かぁ~顔痛いな」



シクシクと効果音をつけて泣き真似をはじめたリュウ。



「リュウ最低!!」



私は取り敢えずシャワーを浴びて考えることにした。



今はリュウのおふざけに付き合える気分じゃない。



と、いうより本当はリュウのおふざけに乗っかって、すべてを忘れてしまいたかった。



でも、それじゃあ、ダメだから……



今はリュウから少し離れなきゃ。



寝不足気味のせいか、体は怠いのに頭の中はなんだか落ち着かない。



シャワーを浴びたら眠くなるかな?!なんて思っていたけど、こういう状態の時は夜までは寝付けない。



だからといって考えるって作業をする気にはなれなくて……



やっぱり、その事から逃げる気しか湧いてこない。



人ってやらなければいけないことほど、やりたくなくなるもんなの?



考えるって作業がこれほど億劫に感じたことはない。



ため息混じりに脱衣場に出ると、用意していなかったはずの着替えが置いてあった。



何だかんだ言っても、リュウは私を気にかけてくれてるんだ。



用意されていた白いワンピースは余所行きの服で、これからダラダラしようとしている私にはちょっとずれているけど、リュウの好意は有り難く受け取ろう。



そもそも、男の人が女物の服を見たところで、何が家着で何が余所行きかなんてわかるはずもない。

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