もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
車内を覗きこむリュウの姿を見て安心した。
もしかしたら、置いて行かれたのかと思ったから……
海に連行された時だって、リュウの姿はいつの間にかなくなっていて、交通の便が悪いあんな場所に置き去りにされた。
あの時はジュンがいたから良かったものの……
今日は無事に送り届けてもらうまで、しっかりと捕まえておかなくちゃ。
「純麗ちゃん、早くってばぁ~」
「わかってる!!」
私は車から降りるとすぐにリュウの腕に手を絡めた。
家に帰るまでは離さないと心に決めて。
リュウはそんな私を気にもとめずに歩きだすから、これでもかってくらいに体を密着させてやった。
ん?なんか見覚えのあるマンション。
そのマンションの前に向かって歩いているんだろうけど……
あれ?ここって。
この場所が何処なのか、このマンションに何故見覚えがあるのか、わかった時にはもう遅かった。
「やぁ!!ジュン君、出迎えありがとう」
リュウは周りを全く気にしないからいいかもしれないけど。
空気を読めてるはずなのに、敢えて無視してそんなこと言えちゃうからいいんだろうけど。
私は目の前に佇む男の視線が痛くて堪らない。
「お前は誰と付き合ってんだ?」
あまりにも恐ろしいジュンの声にテンパる私は説明さえもうまくできない。
「えっ?!いや、違うし、これは、あの」
「純麗ちゃんは、僕ちんともいい仲なわけよ」
「はぁ?!」
またリュウが余計な事を言ってるし。
「行くぞ」
「えっ?!何?ジュ、ジュン?!」
私はドタドタと音が鳴るんじゃないかってくらい力強く向かってきたジュンに腕を捕まれ、引きずるように連行された。