もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
初めての嫉妬
「ジュン、部屋に行って話してあげて。リュウちゃんは、お使い頼まれてくれる?」
「もちろん!!僕ちんは生涯亜美さんの下僕です!!」
「行くぞ。じっとしてろよ」
リュウがまた馬鹿みたいなことを言っている中、ジュンは今日一番優しい声を出して、体育座りのまま私を部屋へと運んだ。
「降ろすぞ」
優しいジュンの声に答えたいとは思ってる。
でも、まだいつものように戻れない私は顔を隠したまま、頷くこともできない。
「そのままでいいから聞いてくれ」
もう、何も聞きたくない。
気持ちが落ち着くまでそっとしておいて欲しいのに……
「今、聞きたくないのはわかる。けど、俺が話したいんだ。俺の勝手な都合だ。この後お前がどうなろうと責任はとってやる」
聞きたくないっていう私の気持ちに気付いてくれたことが嬉しい。
“私”って存在をないものにしないジュンに嬉し涙がボタボタと零れていく。
だって、とーちゃんはいつだって一方的で私が私でなくたって関係ない。
人形に話しかけるように、私の感情なんて無視されていたから……
子供みたいな態度をとっている私を見放さないジュンはやっぱり温かい。
「悪いな。泣くほど辛くても話すぞ」
そう言ったジュンは私を抱きしめ、話始めた。
抱きしめられた温もりが、さっきお母さんに抱きしめられたものと同じで、親子ってこんな風に似るものなんだなと考えていた。
「リュウが山さんからお前を離したほうがいいと提案してきた。お前の保護者があの人だったなんて驚いたよ。お前の家庭環境もだいたいはリュウから聞いてる」
私の許可なしにそんな個人情報話すなんて、リュウの野郎……
でも、良かったのかな……
温かいジュンの家庭を知ってからだと、引け目を感じてジュンには話せなかった気がする。
両親がいなくて、ホテル住まいの自分の環境を知られたくなくて深い人付き合いをしてこなかったのは確かだし。
ジュンに対しても距離を取る原因になっていたはず。
「まだ、リュウが調べてる段階だから詳しくは話せねぇけど、その事がなくても俺はここに住んで欲しいと思ってる」
きっと調べてるっていうのは、この間話していた私がとーちゃんに好きになるように仕向けられているってことだろう。
あの時点でリュウは何か心当たりがあったんだと思う。
そう匂わすような話し方をしていたから……
それが事実だとすれば、裏があるはず。
私をそう仕向けることによって、とーちゃんに何か利益が生まれなければそうなことわざわざしない。
だから、リュウはそれを調べてるんだろう。
「ここに住むのは嫌か?」
ジュンの話を聞きながら、だいぶ冷静になって来た私は顔をあげた。
「返事できるか?今、聞きてぇ」
抱きしめられているから、ジュンの表情は見えていないけど、声だけ聞くと今にも泣き出しそうな顔をしてそうなくらい、情けない声を出している。
「せっかちだね」
「あぁ。昔からだ」
「寂しいの 」
「もう、1人で過ごさなくていい」
「でも、普段は素直になれない」
「俺がわかってるから大丈夫だ」
「本当に1人にしない?」
「約束する」
「なら、いいよ。ジュンと一緒に暮らしてあげる」
「1人になりてぇって言うなよ」
「そんなにべったり系?ジュンって見掛けによらず束縛派?」
「好きな女にはな」