もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
なんだか、くすぐったい。
ジュンの温かさははじめてのことで対応に戸惑ってしまう。
「そんなに私のこと好きなの?」
こんな台詞は照れ隠し。
素直になれない私はホント可愛げがないな。
「そりゃ、もうスキすぎてやばいんじゃない?」
「あっ?」
甘い空気っていうの?そんな、二人の世界は馬鹿な男のせいで一瞬にして壊された。
「だって、純麗ちゃんに一目惚れしたジュンが半年近くも悩んだ挙げ句、拉致るっていう奇行に走ったらしいよ」
ギャハハと馬鹿笑いをしながらジュンの部屋に転がってるのは、勿論リュウ。
「でね、純麗ちゃんに一目惚れした理由が凛としてる姿が綺麗だったんだって!!ギャハハ~それで、あだ名がりんちゃん!!ヤバいよね~!!」
「なんで、てめぇが知ってんだよ?!?!?!」
「ミッキーだよ!!ぶっ!!マジでウケる。さすが、チェリーちゃん」
私から体を離したジュンは床に転がっているリュウを「出ていけ」と蹴飛ばしているのに、リュウは気にすることなく話続ける。
「チェリーちゃんがストーカーだったなんてビックリでしょ?純麗ちゃんも引くよね。ドン引きすぎて笑えるよね!!ギャハハ」
「確かにね」
こんなリュウの姿を見ていたら呆れた気持ちを通り越しておかしくなってきた。
こんな風に馬鹿笑いできるリュウが羨ましくて有り難くて笑いが止まらない。
「はっ?!てめぇら、さっさと出てけ!!」
「えっ?!私も?」
私が笑い出した途端に顔を赤くしたジュンが物凄い形相で睨み付けてくる。
「まぁまぁ、そんなに怒らないの。僕ちんは飲み物を運びに来たんだから」
そう言いながら一旦廊下に出たリュウはトレーに乗せたコップをローテーブルに3つ置いた。
コップが3つってことは、この部屋に居座る気満々だし。
ジュンもそれを見て諦めたのか、ローテーブルの横に腰を下ろし、煙草に火を点けた。
ジュンの部屋は一言で言うと清潔感のある部屋。
カーテンやシーツは白地にブルーの模様が入っているもので統一され、シルバーのラックにローテーブルに紺色のソファー。
余計なものは一切置かれていないこの部屋にあまり生活感を感じられない。
「ところでさ、純麗ちゃんは気にならないわけ?」
「えっ?何が?」
リュウはいつの間にか偉そうにソファーに座っていて、横に座れと言わんばかりに自分の横をポンポンと叩いている。
「いやさ~山さんの許可が出てるのかどうかとか?」
「あっ!!」
私がいくらジュンと暮らしたいと望んだって、それをとーちゃんが許するわけなんてない。
あのホテルを出ることなんて考えたこともないけど、寧ろ追い出されないかどうか、いつもビクビクしてたんだからそんな想像さえしたこともなかった。
けど、私にはあそこから出ることはできないという考えが植え付けられている。
好きになるように仕向けたってのは、こういうことも含めてなんだよな。
「そう言えば、ジュンはとーちゃんと知り合いなの?さっき、そんなようなこと言ってなかった?」
「純麗ちゃん、そっちかい!!」