もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~
「僕ちん、よそ様のラブシーン見る趣味なんかないんだけど。見つめ合って二人の世界に入るのやめてくれない。気分悪い」
リュウの言葉にジュンを見つめていた視線をさっさと逸らした。
リュウの存在忘れてたし……
確かに誰かが居るときには自粛すべき行動だった。
私は今まで目の前でいちゃつくカレカノ達に、心の中で散々暴言を吐いてきた。
それなのに、自分がその立場になったら同じことしてるなんて良くないよね。
「ごめん。リュウ」
「わかれば宜しい」
偉そうな態度は勘にさわるけど、今回ばかりは私が悪い。
「謝る必要なんてねぇよ。人前で人の女とヤるような奴に説教なんかされてんな」
「はっ?!人前で?!って、えっ?人の女ってジュンの彼女とジュンの前でヤったってこと?!」
「あぁ」
「リュウ!!マジで?あんた最低なんだけど?!」
睨み付けた私から隠れるように小さくなるリュウ。
意味ないし。
隠れる物があるかのように、パントマイム的なことして隠れたって丸見えだし!!
おちょくられてるとしか思えないリュウの行動に別な意味で腹が立ってくる。
「そんな怖い顔しないで聞いてよ……純麗ちん」
「聞いてやるわよ!!どんな顔して言い訳並べ立てるのか聞いてやろうじゃないの!!」
「僕ちんだって被害者な訳よ。ジュンの女はもともと僕ちん狙いだったらしくね、まぁ、そもそも、そんな女は山程いたのにジュンが簡単に女のこと信じてたのが馬鹿でしょ?!」
「信じてたわけじゃねぇよ」
リュウの言い訳に口を挟んだジュンは苛立っているのか乱暴な手付きで煙草を取り出し火を点けた。
「じゃあ、何で付き合ったんだよ?」
「信じてはいなかったけど、それまでの女よりは信じれるかもしれねぇと思ったんだよ」
「あれは完璧信じて、惚れてただろ?!」
「違うって言ってんだろ?!」
なんか、イライラする。
ジュンが言葉を吐き出す度にイライラが増してく。
「ジュンちゃんは、すぐに女の子に騙されるわけよ。純粋なチェリーちゃん?!ちがうか、チェリーちゃんだから純粋なのかにゃ?!まぁ、恋は盲目って言うくらいだし、惚れたら騙されてるなんて考えもしないよな~僕ちんもそんな恋がしてみたい‼なんてね~」
イライラの原因が嫉妬だってことは、わかってる。
嫉妬してるなんて、悔しくて認めたくないけど止まらない。
「ふ~ん。騙されてるって気付かないくらい好きだったわけだ。私もそんな恋がしてみたいよ。羨ましいよ、ジュン」
「す、純麗ちゃん?」
「私も盲目な恋がしてみたいわ‼ね、リュウ‼」
リュウって言葉を言えたかどうかわからないタイミングで私の唇は塞がれた。
「出ていけ!」
ジュンの大きな声と扉の閉まる音が続けて聞こえると、息苦しかった呼吸が解放された。
「嫉妬してるとこ、他の男に見せるんじゃねぇよ」
そして、優しく見つめるジュンの瞳と視線がぶつかる。
いつの間にか床に押し倒されていた私は両手を広げ、ジュンの首に手を回した。