もうスキすぎて~ヤクザに買(飼)われた少女~

こんな感覚になったのは……



あの日、以来。



とーちゃんと初めて会ったあの夜。



「泣きそうな顔してんな」



少しだけ、口調が優しくなったジュン。



口を開けば、涙が零れてしまいそうな私は黙ったまま。



きっと、静かで薄暗いこの場所がいけない。 



波の音が私に不安感と淋しさを与えるんだ。



「俺が買う。いくらだ?」



再び、口を開いたジュンの言葉の意味がようやくわかった。



ジュンは私にバイトをしろと言っている。



その、金額交渉だ。



「いくらって、今更聞く?こんな所まで拉致っておいて」



「時間がなかった」



「まず、金額交渉からなんだけど。これじゃあ、順序がめちゃくちゃすぎる」
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