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こんな態度のデカイ後輩がいるもんかと叫ぼうと思ったが、常識と春季さんが作った条例で声がでない。

「これなら、前みたいに黙って付き合ってたほうが楽だったね」

代夏が笑顔で言った。

そうだねと声には出せず曖昧な顔で返した。

「代夏、良かったな」

殺気までの黒いシスコンのオーラが消えて、妹の幸せを純粋に願う兄の顔になっていた。

「うん」

「そろそろ、行くな。手術の日は一緒にいれないけど、頑張れよ」

「うん。大丈夫」

春季さんもどうしても拭いきれない不安を顔に残している。それは代夏にもきっと伝わっている。

代夏が春季さんの手を取ると、それに引き寄せられるように春季さんは代夏を抱きしめて、額同士を当てた。

「はるくん、無理しないでね。私すぐ治るから」

声までも代夏は優しいんだ。

二人にはお互いの心はいやというほど通じ合っている。

入っていけない二人の絆にオレは少なからず嫉妬した。

「代夏、もうオレのことは気にするな。自分のことをだけ良いんだ。お前が笑っていてくれるならオレは頑張れるから」

「はるくん。ありがとう」

お前の幸せがオレの力になるから

そう言って春季さんは病室から出て行った。



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