ゲーム
二人になった病室では、しばらく何も話さなかった。

ただ手だけを繋いでいた。

「不思議なの」

代夏がポツリと呟いた。

「どうしたの?」

「前までね。死ぬかもって言われてもなんとも思わなかった。でもね・・・」

どんどん声が小さくなっていく。

手が、代夏が震えている。

「いま、死ぬって思うとすごく、こわい・・・こわいの」

代夏が泣いていた。大粒の涙を零して泣いている。

「代夏!」

代夏を胸に抱いた。

「爽透くんにもう会えないかと思うとこわい」

「オレもだよ。代夏と一緒にいられないと思うとオレも怖い」

繋いでいる手を握り締めて、オレ達はベッドに倒れこむ。

代夏の頭を支えて枕の上に置くと、涙に濡れた代夏の目と視線があった。

流れる涙を唇で掬い、涙に濡れる唇に自分の唇を重ねた。

全て、代夏の不安も病気もオレに移ってくれば良いのに、それは叶わないから、せめて分かち合うんだ。

「代夏、約束しよう。君が死んだらオレも死ぬ」

君の不安も恐怖も、オレの命も全て分かつんだ。

「それは駄目!」

代夏が声を上げたのを初めて聞いた。

「爽透くんが死ぬのはいや」

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