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学校が終わってからオレは病院に向かった。

春季さんからはメールも何もなかった。

映画の撮影をしていると代夏は言っていた。

彼はプロだ。妹に対する思いも微塵もフィルムには移すことはないだろう。

戻ってきたら、ファンも引くくらいのシスコンに戻ってしまうんだろうけど。

出来るだけ、楽しいことを考えようとしている自分がいた。

不安で仕方ない。

もしもということがよぎる前にかき消すように、未来を考えてる。


病院で代夏は集中治療室にいると教えられた。家族以外の面会は出来ないと言われて、オレは彼女の安否しか聴くことが出来なかった。

手術は成功した。

あとは目が覚めれば良いのだと。

最初の一言で、少し心が軽くなった。

次の二言で、祈るしかできないと思い知る。

「あの、伊織代夏さんの家族は誰か来ましたか?」

「いえ、誰も。代夏ちゃん一人で頑張ったんですよ。きっとすぐ目が覚めますよ」

そしたら、貴方も会えるようになるから。

と看護士さんは教えてくれた。

オレは代夏の病室に向かった。

代夏のいない病室で、帽子の最後の仕上げをする。

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