ゲーム
機械の音が響く集中治療室の中、頭に包帯を巻いた代夏は静かに目を閉じていた。

「代夏ちゃん」

声をかけると代夏はゆっくり目をあけた。

「爽透くん」

小さいけど確かに代夏はオレを呼んだ。

それだけなのに、嬉しい気持ちが溢れて来た。

「よく頑張ったね」

「うん」

「帽子を作ったんだ。包帯が取れたら被ると良い。そして」

オレはポケットから帽子と同じ色の毛糸で作った花のモチーフの指輪を見せた。
「恋人には必要でしょ」

「うれしい…」

代夏の目から涙が落ちる。

綺麗な涙を掬って上げると小さな笑い声が聞こえた。

「爽透くん…」

「何?」

「最初にあげた絵を覚えてる?」

「もちろんだよ」

あの幻想的な桜の絵は、大事に机の中にしまってある。

「あの桜、あるの。一緒に見に行こうね」

「うん。退院したら行こう。必ず」

「やくそく」

「あぁ、約束だ」

絡ませた小指に力を入れた。
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