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「でも、お前にはさうちのお袋に説教してもらったからな。その借りがある。不本意だが、帰ってやる」

春季さんは立ち上がった。

「あっ、あの時はすいません。生意気なこと言ってしまって」

代夏は余り自分の家のことを話そうしないし、未だにアパートで一人暮しをしていることが多いから、二人の母親がどうなったか知らなかった。

「いーや、感謝してる。赤の他人だからこそ、お袋には効果あったんだ。世間と人の目を気にする人だったから。すっかりではないけど普通の家になって来てる。ありがとう」

まるで俳優のような言い方とタイミングにあっけに取られているオレを横目で見ながら代夏に何かを言って彼は帰って行った。

そうだ、元俳優だった。

「春くんね、お礼を言うタイミングを毎日探してたんだよ」
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