ゲーム
「代夏ちゃん」

後ろから声をかけると代夏は何の反応を示さない。

オレが声をかけてやってるというのになんて失礼な女だ。

「代夏ちゃん何してるの?」

殊更優しく話かけて代夏の隣に座ると

「きゃっ」

代夏は驚いて手に持っていた色鉛筆をばらまいてしまった。

「大丈夫?」

慌てて二人で拾い集める。

「ごめん。驚かせたね」

「私が悪いから気にしないで」

自分から受け取った色鉛筆をケースに入れていく。

「何してたの?」

びくびくしている代夏を気遣いながら会話を続けようと努めるが

「…」

代夏は地面に指を指しただけで何も言わない。

細い指先を見ると蟻がうごめいている。

「蟻見てたんだ」

尋ねると、うんと頷くだけだ。
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