ゲーム
「すごい、おいしいね」

「でしょ。友達も連れてきてあげて。静さんも喜ぶから」

「営業上手だね」

「そんなことないよ。美味しいものはみんなに教えてあげたいの」

代夏はそう言うと、デザートのチョコレートケーキを少しホークに乗せて口に入れた。

「ねぇ、爽透くん」

「何?」

「映画、面白かったね」

いきなりだったが、話をあわせていく。

代夏と話すのは単純に楽しい。気付かなかったことにも気付かされるから。

「名前って大事だよね」

「そうだね。主人公が忘れてきた記憶を取り戻すのは、本当の名前がキーワードになってたからね」

映画の中盤、何者かに襲われて主人公は、ヒロインに自分の真の名前を告げられて、自分の過去と特殊な力を取り戻した。

なかなか斬新な展開だった。

「私の名前を忘れないで」

「え?」

「私は春の代わりの夏・・・。だから代夏なの。春がきたら忘れられてしまう。だから爽透くんは私を忘れないで」

< 96 / 143 >

この作品をシェア

pagetop