バスボムに、愛を込めて


「バスボムだけで十種類か……多いな」


企画書を目で追っていた本郷さんが、そう言って表情を曇らせる。


「十種類考えるだけならいいけど、目新しさもないとだめだろうし……これはかなり苦労しそうね」


寧々さんもなんだか弱気だけど、みんなそんなに悲観しなくたっていいのに。

思いついたものすべてを商品にするくらいの気持ちでいれば、十種類くらいなんてことないと思うけどなぁ。


「あたしはワクワクしてますよ? バスボムって、アイスクリームショップみたいにいっぱい種類があればあるほど楽しいと思うんです。色も香りも、中に閉じ込めるものもきっと組み合わせは無限にあります。それをあたしたちが厳選して、さらに洗練して……
きっと完成したときにはものすごい達成感だと思います!」


先輩方ふたりのやる気につながれば、と言った言葉なのに、表情を和らげてくれたのは寧々さんだけ。

本郷さんは冷たい目であたしを一瞥して、少しだけずれていた眼鏡を指で押し上げる。


「……能天気って言うんだそういうのは。無限だからこそ困るんだろ、最初にある程度絞る作業だけでも骨が折れるぞ」


やった、本日二回目の萌えアクションゲット!

やっぱり職場が同じってすごい。今日はあと何回ずれてくれるかしら、本郷さんの眼鏡……


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