バスボムに、愛を込めて
13.縮んでいく距離
長い連休が明けてから一週間。
あたしは本郷さんとのデートで浮かれきった気分をしっかりと心にしまい込み、仕事に精を出していた。
「わ、美萌ちゃん、それ可愛い!」
あたしの手元の企画書を覗き込み、はしゃいだ声をあげたのは寧々さんだ。
ずっと課題だった自分考案のバスボムの“形”を、ようやく思いついたので、絵に起こしていたところだった。
「私にも見せて下さい――って。美萌さん、絵、上手すぎます!」
寧々さんとは反対側から顔を出したお嬢も、そんな嬉しいことを言ってくれる。
「あはは、そんなに上手くないですよ。ただ中学生くらいのとき、中途半端に漫画家になりたいとか思ってる時期があったので、絵を描くのは好きなんです」
寧々さんの似顔絵を砂浜に描いてる時も、楽しかったな。
いや、あれは本郷さんが隣にいたから余計だよね――って、いかんいかん、仕事に集中。
「なるほどね……そうだ、もし余裕があれば私のも、美萌ちゃんに描き直してもらっていいかしら? やっぱり上手い人が描いた方が、上の人たちに見せたときにインパクトと説得力があると思うし」
「もちろん、構いませんよ」
「じゃあ私のも是非!」
結局すべてのバスボムのイラスト化をあたしが担当することになり、その代わりにあたし自身が抱えていた細々とした仕事を二人は片づけてくれることになった。
展示会のこともあるし、毎日が忙しくて本郷さんとの次のデートの予定は全く立たないけど、あたしが元気でいられるのには理由がある。