バスボムに、愛を込めて


本郷さんの読み通り、あたしたちの役割はそれぞれ前いた部門のヘルプだった。

訪れたバイヤーに資料や試供品を配り、商品について説明するのが主な仕事。

いつ誰に声を掛けられても説明を完璧にこなすことが必要だから、今回PRする商品についてよく理解しておくようにと指示された。

それにしても、去年は二万人のバイヤーが一堂に会し、今年はそれ以上の集客が予想されるイベントだなんて、なんだか興奮してしまう。

商品に魅力を感じてもらえればその場で商談が行われ、その件数が多ければ多いほど販路が一気に拡大するチャンス。
全国ネットのテレビ局も取材に来るこの展示会は、化粧品業界では一年の内で最も大きなお祭りなんだとか。


「……お前、本当に迷子になりそうだな」


打ち合わせを終えて実験室に戻る途中、展示会の資料を見直しながら、本郷さんがため息交じりに呟く。


「ここまですごいとは知りませんでしたね。海外からのお客さんまで来るっていうのも初耳だったし。あたし英語苦手なんだけどなぁ」


各ブースに一人は英会話に堪能な社員を置いてくれるらしいけど、一度にたくさん来たらその人だけでは対応しきれないだろうし、正直不安だ。


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