バスボムに、愛を込めて
「その時はこっちに目配せでもしろ。ブースは斜め向かいみたいだし、失礼があったら大変だから助けに行ってやるよ」
や、優しい……! ていうか本郷さんてば、英語までできるの!?
どんだけあたしの心を掴めば気が済むんですか!
「ありがとうございます、近くに本郷さんがいてくれると思うと心強いです!」
満面の笑みで答えたあたしに、本郷さんは前を向いたままでこう言った。
「その日……展示会が終われば少しは肩の荷も下りるだろうし、終わったら何か食べに行くか?」
「……! い、行きますっ!」
「馬鹿、声がでかい」
「だって、嬉しいんですもん!」
やったぁ、ついに二回目のデートのお誘いだ!
次こそは、あたしの家にも寄ってもらおう。綺麗好きな彼のために、今から少しずつ部屋を片づけておかないとなぁ。
本郷さんと、キスとかそういう進展を望めないことはもちろんわかってるけど、いつもより少し狭い空間で、話したり笑い合ったりするだけでも、きっとあたしは幸せだ。
仕事へのやる気も俄然アップしたあたしは、それからの日々を展示会でPRする商品の勉強と、バスボムのイラスト作成に精を出し、次々とイラストを川端さんに見せては順調にオッケーをもらうことができた。
寧々さんやお嬢も、“自分が思い描いていたバスボムよりずっと可愛い”と喜んでくれていて、心から嬉しい。
最近孝二は姿を見せないし、あたしを思い悩ませるものは何一つない。
充実した日々はあっという間に過ぎて行き、展示会の日はすぐにやってきた。