バスボムに、愛を込めて
そこにいたのは、サファイヤのように綺麗な青い目をした、金髪の男性。
背も高いし腰の位置も日本人にはあり得ないくらい上にあって、思わず彼に見惚れてしまった。
「Where is the men's room please?」
「は、い……?」
……どうしよう。英語?
口調が早すぎてそれすらも自信がないけど、とにかく何を聞かれているのかわからない。
あからさまに困惑する私に、彼はおそらく同じ言葉を、今度はゆっくりと話し出す。
でも……ゆっくり言われても、わからないものはわからない。
すぐに同じブースの英語が話せる社員を探したけれど、別の外国人と話し中だ。
――そうだ! 本郷さん! ヘルプミー!(あたしにわかる英語はこれくらいよ!)
すかさず斜め向かいのブースに視線を送ってみたけど、本郷さんの姿は見当たらない。
ううん、いる……あの靴、あの頭は、あたしが見まがうわけのない彼のものだ。
ただ、周りを若い女性バイヤーさんたちに囲まれて、顔を確認することができないだけ。
しかも、その女性集団はどう見てもミーハーな感じで、商談につながるようなお客さんじゃなさそう。
もう! そりゃあの容姿だもん、モテて当然だけど!
今はこっちを助けて欲しいのに……!
心の中で地団太を踏みつつ、サファイヤの彼に向き直るあたし。
なんとかしてここは自分で切り抜けなくちゃ……