バスボムに、愛を込めて
「ごめん! その話は後でもいい? あのね、会社の誰にも口外しないでほしいんだけど……!」
『――――USB、返して欲しいんだろ?』
え……? あたしの思考が、一瞬フリーズした。
なんで孝二が知ってるの? もしかして、もうデータの内容は会社全体に知れ渡ってしまっているとか?
「どうして、そのこと……」
『どうしてだと思う?』
意味深な言い方。その口調は、笑っているようにも聞こえた。
……やだ。まさかそんなわけ、ないよね。そんなことする人じゃないよ、孝二は。
あたしは、信じないよ……
スマホを握る手が震えるあたしを見て、お嬢が心配そうな表情を浮かべる。
いつまでも答えようとしないあたしに痺れを切らしたのか、孝二は自分から、あたしが信じたくなかった事実のすべてを話した。
そうして彼が突きつけてきた条件は――――
『今から一人で取りに来い。周りにばれるなよ? 特に“本郷”には』