バスボムに、愛を込めて
2.まんぷく亭の元カノ
「……っあー、疲れた。本郷くん遅いわね」
作業が一段落したのか、ずっと無言だった寧々さんがそう言って椅子に座ったまま伸びをした。壁にかかった時計を見れば、いつの間にかもうお昼前だ。
「羽石さん、もし作業のきりがよければ休憩にしちゃわない?」
「あ……はい、ちょっとだけ待ってください! 一枚だけ印刷してみるので」
“印刷”をクリックしたあたしは部屋の隅にあるプリンターの前に移動し、出てきたアンケートを持って寧々さんのもとへ近づいた。
「あの、これ見てもらってもいいですか?」
パソコンを閉じた寧々さんは、微笑んで頷く。
「ん、いいわよ。でもお昼食べながらにしましょ? お弁当とかじゃないわよね?」
「はい、いつも外食かコンビニです」
「じゃあ問題ないわね。私の好きなお店でいい?」
「はい!」
寧々さんおススメ……なんだかお洒落そうだし気になる。
あたしの予想では、ずばりパスタが美味しいお店なんじゃないかなぁ。それで、きっとスイーツも凝ってたりして。
あ、にんにく系のパスタ食べればキムチのにおいと相殺されないかな……
そんなくだらないことを考えながら、あたしは寧々さんと一緒に白衣を脱ぐためロッカー室に向かった。