バスボムに、愛を込めて


「あたし、お弁当作ってきました。本郷さんと一緒に食べようと思って」


デート当日、バスに揺られながらそう無邪気に言う羽石を見て、前もって言っておくべきだったと後悔した。
俺は信用できる飲食店以外で、他人の作った料理は食べられないのだと。

申し訳ない、という気持ちはあったがそれを表に出すのが照れくさく、俺はいつものようにそっけない態度で弁当を断ってしまった。

なぜなら、その日の羽石はいつもより可愛くて、待ち合わせの時点で相当心を掴まれていたのだ。
……まるで示し合わせたようにお互いボーダーの服だったし。

だから余計に優しい言葉なんてかけられず、雰囲気は最悪の状態。

そしてとうとうコンビニの駐車場で羽石は動かなくなってしまった。


「弁当のことは申し訳ないと思ってる。だけど食えない物は食えない。こんな男と一緒にいるのはごめんだと思うならもうここで別れよう。……無理矢理連れてきて悪かった」


やっぱり俺は、デートなんてものするべきじゃなかったんだ。

羽石に……特別になりつつあった存在にこんな顔させるんなら、最初から誘いを受けるんじゃなかった。

そんな後悔が胸に渦巻くのを隠しつつ、俺は羽石にデートの終わりを提案した。

しかし、彼女の出した答えは――――


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