バスボムに、愛を込めて


「……うわ、その反応。あの本郷くんが赤くなってたって、美萌ちゃんに教えてあげてもいい? たぶん一気に元気になるわよ」

「……やめとけ。アイツのことは俺が何とかする」

「それ、本当ね? きっかけがどうとか、もうウジウジ言わない?」

「……たぶん」


羽石のことは近いうちに必ずなんとかする、と約束して、俺は葛西とともに薬品庫を出た。

そしていつもの実験室に向かう途中で、前からすごい勢いで走ってきた誰かとぶつかった。


「ご、めんなさ――!」

「……羽石。どこ行くんだ、今から朝礼始めるぞ。今日は川端さんがいないから連絡だけで済ませるが、実験室に戻れ」

「あ、あの、えーと」


きょろきょろとせわしなく視線を動かし、どこか様子がいつもと違う彼女はこう言い放った。


「て……敵地に乗り込んできます! でも、加勢はいりませんので!」

「……は?」


おかしなことを言うのはいつものことだが、今までで一番意味の分からない発言だった。

結局、羽石は唖然とする俺と葛西を無視して、そのまま実験室とは反対方向へ走り去ってしまった。


「……美萌ちゃん、ついに壊れちゃったのかしら」


葛西が大真面目な顔で呟く。

まさか壊れたってことはないと思うが、確かに変だった。

しかし敵地と言うのは一体……首を傾げながら実験室に入ると、そこにもまた妙な光景が。


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